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実は日本の病理(検査)部門には精度管理以前の大問題がいくつかあり、そちらの解 決が先という意識が病理医に強いので、当分各学会や支部会が精度管理に乗り出す可 能性は低いでしょう。
オギノ先生のおっしゃりたいことはよく理解できます。診療レベルの維持管理のため にQCが必要なのですが、教育の 質を保つためにも必要ですね。
その通りです。特に卒後研修の病理部門に関しては非常に厳しい状況です。あらため て日本と米国では同じ土俵での議論が出来ないことを強く感じますが、まず日本の病 理の抱える問題のひとつを御紹介します。
日本では病理学という学問が一般に認知されていないため、病理医という (subspecialty)が認められていません。日本病理学会が当時の厚生省(現在の厚労 相)に対して提出していた病理科の標榜要求は、2年ほど前に拒否され、現在病理医は よって立つ根拠を持っていません。そのため病理診断部門は臨床検査の一部門扱い、 または臨床の下請けのままです。さらに依然として病理学は国家試験の範囲外のた め、学生・研修医の病理学・病理医に対する 認識も低いままです。したがって病理学を志す若い研究者・医師が究めて不足してい ますし、<同じ>医者・医学者でありながら、臨床医(学者)は我々のことを検査技 師と臨床医の中間的存在として扱う人もいます。この問題は病理関連のメーリング・ リストでも何度も活発に議論されていますが、解決には一刻も早く厚労相から病理科 を標榜出来るよう認可を受けることしかありません。ちなみに標榜化を拒否された最 大の原因は日本医師会から反対されたことだそうです(反対理由は病理検査保険点数 をダンピングする病理医がいるからだとか...、それがメジャーな反対理由になるんで しょうか?そんなことは防止策が立てられるはず)。
しかし実はこの問題には病理学会・病理学教室・病理学者・病理医自身の問題もあり ます。学会も十数年前までは病理医・病理診断業務を正当に認知していなかったほど です。逆に、ある私立医大ではすでに病理学講座を臨床講座に移行されたようで、こ れは解決を目指した好ましい事例だと思います。
現在の日本の病理(医・学者・学教室・学会)のおかれた状況をごく簡単に御紹介し ました。この問題の解決が当面の最重要項目です。卒後研修には病理部門が認知され ていながら、実際には専門医が認知されていないという矛盾はすべての医療・医学関 係者に知って欲しいと思います。まず病理科が標榜でき、研修医を受け入れられる環 境を整備しないと、充分な卒後教育が出来ないでしょう。残念ながら quality control にまではとても手が回らないのが現状と言わざるを得ません。
One of the reasons why I came to the US for pathology training is because I could not get satisfactory pathology training in Japan. Since I got out of Japan, I have always been thinking of bringing back what I have learned in the US. Therefore, for the past year I had been looking for a pathologist position in Japan, but I could not get a good response except for a few places. Then, I changed my plan and started looking for a pathologist position in the US. Very fortunately, I got it at BWH/DFCI/HMS.
I think that many people are actually interested in pathology in Japan. But the situation in departments of pathology in general has been forcing many young talented doctors to exclude a pathologist as a career choice. In Japan, only there has been only a total of ~2500 Board Certified pathologists (some of them, of course, have been retired), while there has been hundreds of new Board Certified pathologists each year in the US.
ただ、学問としての病理学は(法医学も?)、基礎医学と臨床医学の狭間にずっとあ りましたよね。東大の場合、病理の2講座を、臨床病理、実験病理という形で使い分 けてきた歴史があり、前者には臨床系の教授人事、後者は基礎系のなわばり、みたい になっていました。ただ、たとえば、昔なら基礎医学といっても、解剖・生理・生化 学の間の垣根も高かったのですが、今は分子生物学を通じて、手法的にはほとんどど こも同じことをやっているし、臨床研究と基礎研究の垣根も低くなり、大講座制がか なり進んできたこともありますから、「病理学」として、ことさら独立性を高める必 要がなくなってきている・・・というか、垣根を低くした方が良いと、私は考えてい ます。もちろん、従来の「病理学的な」ものの見方をできることは重要だし、それを 医学生に教えることも必要ですが・・・そのあたり、バランスが難しいですね。
>いのは確かに変ですね。放射線科のように、interventional pathology なんていう
おもしろそうですが、今のところ無いようです。
>のもあるのでしょうか?だいたい、普通の内科医や外科医にとって、病理医の診断
>は、神様からの声みたいなもので、ほとんど反論できないに近いじゃないですか?ぼ
いやー、最近は結構クレームが来ることがあります。先生も帰国されて「おかしな病 理診断だな」と思われれば「臨床と合わないんだけど」とクレームをつけられた方が 良いと思います。
>くもリンパ腫の患者さんを持ったときに、権威ある診断を求めて、何カ所かの先生の
・・・権威ある診断・・・、それを言われるとつらいものが・・・。
>ただ、学問としての病理学は(法医学も?)、基礎医学と臨床医学の狭間にずっとあ
>りましたよね。東大の場合、病理の2講座を、臨床病理、実験病理という形で使い分
日本は大体どこでもそうでしたが、もしかしたら原型は東大にあるのかも知れませ ん。
>なり進んできたこともありますから、「病理学」として、ことさら独立性を高める必
そうですね。いまどき研究分野での病理学なんて独立してるわけ無いですよね。そう いう意味では実験病理という言葉は意味を成さないかも知れません。
でも教育カリキュラムでは疾患の形態学的変化ではなく、病理学総論的事項、即ち炎 症とは何か、腫瘍とは何か、種々の免疫異常のメカニズム、加齢に伴う変化と病的変 化の区別、などは依然として他の基礎医学あるいは臨床医学の分野ではなく、病理学 の守備範囲であろうと思います。でも医学発展の歴史に沿って、微生物学教室・免疫 学教室・老人医学教室が既に存在する時代ですので、炎症学・腫瘍学もいずれ病理学 から独立して行くかも知れません。
昨今の大学院大学の講座名をながめていると、ひしひしと危機感を感じます。そうな ると益々病理診断学しか生き残る道は無いでしょうねぇ。
In the US, in contrast, pathology completely encompasses immunology and partly microbiology and oncology as well. With regard to department of pathology at a hospital, it handles all laboratory testing including clinical chemistry, clinical microbiology, clinical immunology, hematology, transfusion medicine, and molecular diagnostics. Therefore, the situation here is totally different from that in Japan. For example, this department of pathology at the Univ. of Pennsylvania is huge and has about 100 faculty members (assistant professors or above), including more than 30 clinical staff members. I do not even know a majority of them. I think the situation is similar at Harvard. Most medical schools do not have such a huge department of pathology, but this nicely exemplifies a difference between Japan and the US.
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